KANEKO Shinichi

兼子真一
現代アーティスト。1974年愛知県生まれ。神奈川県在住。
東京藝術大学デザイン科卒業(1999)。東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了(2001)。
「関係」をテーマに、春画の手足に着想を得た「the Couple」シリーズを制作。手足の「もつれ」から「関係」の可視化を試みてその美を模索する。彫刻・絵画・ドローイングなど多岐にわたる表現で展開する。
主な展示は、画廊宮坂(2005~)、国登録有形文化財・旧近藤邸(2013)、由布院アートホール(2011)などで個展のほか展示多数。アートフェア東京(2016)、英国での彫刻展 Fresh air(2013)に出展。その他に、iichiko(焼酎)の雑誌広告にドローイングが起用(2018.6〜)。

the Couple シリーズ

“ぼくは、目の前で起こる現象よりも、それらを生み出す「関係」に興味がある。あらゆる物事をつなげ、そのすべてを変えていく、目には見えない関わりと交わり。いつからかそれが、美しくて複雑な「もつれ」として、ぼくの前でうごめき始めた。移り変わるモノタチが、まるで「もつれあいのダンス」を始めたようだった。”

− 兼子真一

兼子真一は、2013年より「関係」をテーマにした「the Couple」シリーズの制作を開始し、彫刻・絵画・ドローイングなど多岐にわたる表現で展開しています。兼子は、「関係」を「物事の繋がりが起こす変化」と捉え、その複雑な状態を「もつれ」として可視化します。「the Couple」シリーズで表現される「もつれ」は、浮世絵春画の男女の交合に着想を得ており、その中でも特に、春画特有のもつれあう手足に注目します。兼子は、春画の手足の「もつれ」を引用して、「関係」という言葉に含まれた壮大な意味を再考してその美を探求し続けています。

Reference Photos

(参考資料:春画の手足)

KANEKO Shinichi|the Couple -Otonakoku-Meguri 2016|ART FAIR TOKYO 2016|CREATIVE SPACE HAYASHI

「大人国巡り 2016」|ART FAIR TOKYO 2016

様々な表現の可能性を探る「THE COUPLE」シリーズ

兼子は、2013年から様々な技法・表現で「関係」の可能性を探り始めました。現在、「the Couple」シリーズは、「和合」「恋舞」「春字」「ショウゾウガ」などの作品で表現されています。

the Couple Vol.4, 2017, GALLERY MIYASAKA, Tokyo, Japan

「the Couple Vol.4 -胴は消え 心は鳴る」|2017


「和合」

「和合」は、春画の交合の中で交情する手や足の繋がりに焦点をあてた彫刻です。兼子は、春画表現の中でも特にその手足に注目しており、男女の交情が最も露わになる部位であることを発見しました。手足だけをトリミングして平面から立体化することにより、繋がりの境界と接点を強調した作品となっています。

春画の手足を立体化した彫刻作品「手足和合」
春画の手を立体化した彫刻作品「和合・円窓」
春画の手を立体化した彫刻作品「和合・心音」

「手足和合」(2016)、「円窓」(2017)、「心音」(2018)


「恋舞」

「恋舞」は、無造作に塗った色の中から男女の姿を見つけ出す方法で描かれており、普段からその絵は描きためられています。描きためた「恋舞」はその後、一旦デジタル環境で重ねて加工し、再びアナログ作業でキャンバスにペインティングします。兼子は、デジタル作業の意図的な配置と、アナログ作業の衝動的なペインティングの組み合わせにより、意識と無意識のバランスを保ちながら複雑な表現を目指しています。

Drawing, [The Couple]

「恋舞」| 左:-18/0102、右:-18/0103 (2018)


「春字」

「春字」は、交合の象形文字です。春画の手足を線で結んで「関係=もつれ」を表現しています。兼子は、「春字」を禅の「※円相」で描かれる円の軌道上の点と想定しています。つまり、円相の「完全無欠な世界」を表す円が、「関係」という点の連続が線となって描かれたものと考えました。そして、本来目に見えないこの点を顕微鏡で覗くように拡大し、その姿を「春字」として可視化します。多種多様に描かれた「春字」は、「関係」のバリエーションとして現在も記録され続けています。

(※「円相」とは禅における書画のひとつで、図形の丸を一筆で描いたもの。悟りや真理、仏性、宇宙全体などを円形で象徴的に表現したもの。)

Drawing, [The Couple]

中央:「春字 -タガ」(2018)

左/右:「春字」(2017)


「ショウゾウガ」プロジェクト

「ショウゾウガ」プロジェクトは、アーティスト自身が他人と関わり合うことで生まれる表現を探す試みとして、2018年にスタートしました。兼子の描く「ショウゾウガ」は、本来の肖像画のように人物の権威や成功や幸福を主張せず、モデルに似せて描かれません。兼子は、モデルと対面し観察しながらも、本人と分からない複雑な顔を描きます。この「ショウゾウガ」は、幕末の浮世絵師 歌川国芳(1798~1861、参考写真/左)による寄せ絵に着想を得ています。寄せ絵とは、人の顔が多数の小さな人の寄せ集めで描かれた絵です。兼子は、モデルと会い、人物の纒う雰囲気や生き方を背景にして、寄せ絵の素材となる「恋舞(「the Couple」シリーズのひとつ。無造作に塗った色の中から男女の姿を見つけ出す方法で描かれた絵)」を複数選び、それらを寄せ集めて「ショウゾウガ」を描きます。兼子は、「人の自己や自我もまた万物の一部としてもつれ合って形成されている。ぼくが人物を描くとしたら、その人物の外見以上に彼らを取り巻く全ての関わりを想像する。」と言います。そして、常に物事の間の見えない吸引力と斥力の相互作用を探し、それを「もつれ」として表現します。「ショウゾウガ」は、見た人に「私は何者か?」と問いかけ、「私を形成するもの」に向き合う機会を与えます。

Drawing, [The Couple]
Drawing, [The Couple]

「ショウゾウガ」(2018)

(参考資料/左:歌川国芳「みかけはこはゐがとんだいゝ人だ」)

 

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